約1兆円の事件も、入口は「検索結果の一番上」でした。プロのエンジニアでも引っかかるんです。家族みんなで、ルールを決めておきましょう。

先日、暗号資産取引所バイナンスの事件のニュースを見て、背筋が伸びました。

盗まれたのは約63億ドル、日本円で約1兆円相当です。

桁が大きすぎて実感のわかない金額ですが、引っかかったのは世界最大級の取引所の、それもプロのエンジニアでした。

「自分は大丈夫」と思っている人ほど危ない。そう感じたので、事件の手口と、わが家で決めた守り方をまとめておきます。

約1兆円が盗まれた事件、あっけない入口

バイナンスが11月3日に公表した内容(ロイターなどが報道)によると、侵入の入口は大きく2つありました。

1つ目は、今年6月です。

ウォレットの運用を担当するエンジニアが、人気のAIコーディングツールを使おうとして検索し、改ざんされたインストーラーをダウンロードしてしまいました。

改ざん版は広告の仕組みを使って、正規版よりも検索結果の上に表示されていたそうです。

2つ目は、9月です。

別のエンジニアが、正規の求人サイトで偽の採用担当者から接触を受けました。面接を重ねて信用させたうえで、「課題」として業務用パソコンに不正なコードをダウンロードさせたそうです。

そこから社内のツールなどを足がかりに侵入が広がり、10月29日に資金が流出しました。北朝鮮系グループの関与も指摘されています。

なお、バイナンスは利用者に損失を負わせない方針を示しています。

注目したいのは、どちらの入口も「検索」と「人の信用」という、日常の動作だったことです。高度な技術で壁を破られたというより、油断を突かれた事件でした。

なぜ「検索結果の一番上」が危ないのか

検索結果の一番上に出てくる「スポンサー」「広告」の枠は、お金を払えば誰でも出せます。

しかも、「どんな言葉で検索した人に表示するか」まで指定できます。

つまり、「あるツールの名前で検索した人」に、本物そっくりの偽サイトを見せることができてしまうのです。

一番上にあるから本物、ではありません。むしろ一番上は「お金で買われた場所」だと考えたほうが安全です。

Googleは「スポンサー」と表示してくれるので、表示を見る習慣さえあれば避けられます。広告の数は毎回同じではないので、「上から何番目までが広告」と決めつけず、表示を確認するのがコツです。

わが家を守る3つのルール

1. 「スポンサー」「広告」と付いた結果は押さない

ソフトやサービスを探すときは、広告を飛ばして、その下の通常の検索結果から開くようにします。

急いでいるときほど一番上を押してしまうので、ここは意識して止まるポイントです。

2. 公式は、ブックマークと公式アプリから開く

銀行、証券、暗号資産、決済サービスなど、お金に関わるものは検索経由で開かないことにしました。

一度、本物だと確認したページをブックマークしておく。スマホなら公式アプリを使う。これだけで、偽サイトに当たる確率はぐっと下がります。

ダウンロードも同じです。ソフトは、検索結果ではなく公式サイトから入れるのが鉄則です。

3. ブラウザとOSは最新に保ち、大事なことは複数源で確認する

先日、このブログでも「Chromeを最新にアップデートしましょう」という政府機関の呼びかけを記事にしました。

アップデートには、こうした攻撃への対策も含まれています。面倒でも後回しにしないことが、静かな防御になります。

あわせて、お金や個人情報に関わる大事なことは、1つの情報源だけで決めないこと。AIの答えも便利ですが間違えることがあるので、別の情報源でも確かめる習慣をつけています。

N的視点

僕自身、証券口座の乗っ取りニュースが続いてから、お金に関わるサービスは検索から開くのをやめました。アプリかブックマークだけ、と決めるだけで、だいぶ安心感が違います。

正直、個人情報はもう流出している前提で考えたほうがいいと思っています。だからこそ、入り口で止める習慣のほうが大事です。

わが家には子どもが2人います。子どもたちが検索を使うようになる前に、「一番上は広告かもしれない」を当たり前にしておきたいですね。

まとめ

・約1兆円の流出も、入口は「検索広告」と「偽の面接」という日常の油断でした
・検索結果の一番上は、お金で買える広告枠。「スポンサー」表示を見て、押さない
・公式はブックマークと公式アプリから。ソフトは公式サイトから
・ブラウザとOSは最新に。大事なことは複数の情報源で確認する

プロのエンジニアでも引っかかる時代です。仕組みを増やすより、家族で同じルールを共有しておくことが、結局は一番効くのだと思います。

(参考:ロイター「バイナンス、暗号資産流出の手口公表」2026年11月3日ほか報道)

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